2020年1月29日、中国経済に詳しい李雪連・丸紅経済研究所シニア・アナリストが日本記者クラブで会見し、米中対立、新型肺炎が中国や世界の経済に与える影響などについて語った。李氏は、2020年の中国国内総生産(GDP)伸び率について、「当初19年の6.1%から5.8%に減速すると見込んでいたが、新型肺炎によるダメージは大きく、このままでは1%程度下押しする可能性もある」と予測。中国政府は「6%目標」を達成するために、(1)大規模な財政出動(2)政策金利の引き下げ(3)不動産購入規制の撤廃――など温存していた3つのカード(対策)を駆使し、5%割れなどハードランディングを回避し目標に近づけるだろうと指摘した。
李氏は中国外交学院卒業後、北京のNEC関連企業、早大大学院などを経て丸紅に入社し、米戦略国際問題研究所(CSIS)中国部への出向経験もある。2015年に丸紅経済研究所シニア・アナリストに就任した。
李雪連氏の発言要旨は次の通り。
2019年のGDP伸び率は米中貿易摩擦の影響もあり、6.1%と1990年以来の低成長となった。当初20年のGDPはさらに低い5.8%にさらに減速すると見込んでいたが、年明けに本格化した新型肺炎のダメージは大きく、このままでは1%程度下押しすると予想している。
中国政府は3月の全人代で「6%目標」を正式に決定すると見られる。この目標を達成するために、(1)大規模な財政出動、(2)政策金利の引き下げ、(3)不動産購入規制の撤廃――など温存していた3つのカードを駆使することになろう。同政府は新型肺炎のような緊急事態に備えてこれらの施策を温存していた。緊急対策により、20年のGDPは6%を割り込むものの大きな落ち込みにはならないと考える。
生鮮食品を除くコアCPI(消費者物価)は伸び鈍化が続いているが、アフリカ豚コレラによる豚肉価格高騰を受けCPIは約8年ぶりの高水準に上昇。国民食である豚肉のCPIに占める割合は2.4%(日本は0.4%)と大きく利下げの足かせになりかねない。過剰債務や設備などの構造問題も抱えたままであり、大規模な景気対策は成長率5%割れなどのハードランディングを回避するための「最後の砦」となろう。
2016年以降、不動産の規制が強化され、購入制限など過熱防止策が取られているが、これらの措置を緩和する可能性がある。20年以降、住宅市場が徐々に縮小。北京や上海などの大都市では人口流入や買い替え需要が見込まれる。
中国政府は景気の急低下を防ぐために対策を総動員することになろう。
新型肺炎の感染拡大により、世界経済への影響が懸念される。中国経済のウエイトが格段に増大しているため、総じて2002~2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)騒動の時よりも甚大になるのは必至である。
特に訪日中国人の激減などによる日本の景気への影響は多大。2003年の中国からの訪日客は44万人であり、現在(2019年は959万人)とは比較にならない。インバウンド需要に依存してきた小売業や宿泊・飲食サービス業への影響は大きい。アジア近隣諸国や米国や欧州などへの波及も見定める必要がある。
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