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<直言!日本と世界の未来>グローバル企業の税逃れ「年56兆円」に驚く=ITデジタル「GAFA」の実態とは?―立石信雄オムロン元会長

「GAFA」という用語を初めて聞いた時、何のことかよく分からなかった。米国発の多国籍IT企業であるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの総称で、各社のアルファベットの頭文字をつなげたものだとの説明を受け得心した。 

これら新興のITグローバル企業が短期間に急成長し、低い税金や賃金、緩い規制を享受し、巨万の富を築いているという。これに対し欧州をはじめとする国家が富の流出を止めようと課税や規制の強化に動き始めた。 

米誌フォーブスの世界長者番付によると、米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)の保有個人資産は世界最大の1310億ドル(約14兆6000億円)で、2年連続で首位となった。最高益を続けるアマゾンの株高がその要因だが、アマゾンの税負担は極めて少ない。2018年の税引き前利益は約113億ドルで、法人税負担は約12億ドル。税率は10%程度にすぎない。 

アマゾンに限らずGAFAは課税額がきわめて過少である。各国の税制の違いを巧妙に利用したり、租税回避地(タックスヘイブン)を使って節税したりしてきた。国連大学の推計によると、グローバル企業全体の法人税の徴収逃れ額は年5000億ドル(約56兆円)に上り、米国はもちろん欧州各国、中国、日本、インドなどの国家は多額の流出に見舞われている。 

GAFAの合計売上高は70兆円を超え、日本の税収(約60兆円)を大きく上回る。国境を越えて縦横無尽に事業を広げるIT巨人は国家にとって「富の棄損」に他ならない。GAFAの株式時価総額は、世界の国家の国内総生産(GDP)の20位以内に相当するオランダやサウジアラビアに匹敵する規模に膨らんだというから尋常ではない。 

コカ・コーラやプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、IBM、ロイヤルダッチシェルといった従来の多国籍企業と異なり、工場や営業所などの有形資産が少ない新興ITグローバル企業は各国・地域に大きな雇用を創出しない。この結果、時価総額の急拡大を通じて富は大株主に集中しやすい。 

従来型の企業は、収入に占める納税率が平均で20%~30%なのに対し、IT企業は平均で10%弱といわれている。2016年5月には過去最大の情報リークとされる「パナマ文書」が公開。世界約21万社ものペーパーカンパニーの税逃れ情報が暴露され、衝撃を与えた。 

グローバル企業の税逃れ問題を最初に提起したのは欧州連合(EU)。17年10月に欧州委員会が低税率国のルクセンブルクに対してアマゾンへの「違法」な税優遇をやめるよう要求した。GAFAだけでなく、米マクドナルドや米スターバックスなどのグローバル企業にも税逃れの疑いをかけ、調査した。EUに続き、フランスや英国、インドなど各国で課税を強化する動きが出ているほか、経済協力開発機構(OECD)も国際的な課税の議論を進めている。 

2008年のリーマン・ショック後金融危機への対応策として各国政府は財政支出の拡大、中央銀行は大規模金融緩和を続けてきた。金融市場にあふれるマネーがGAFAなどのグローバル企業に流れ込み、時価総額拡大を後押し。財政政策による景気の下支えがグローバル企業の業績拡大につながり、富が国家からグローバル企業に流れたと分析されている。 

国境に縛られないITの分野は、強者が弱者を次々飲み込み、世界で「1強」を生んでいる。その一方で、富の格差は広がるばかり。国際非政府組織オックスファムの報告によれば、世界の富豪上位のわずか26人で、世界人口の半数に当たる貧困層38億人が持つ資産と同額を保有する。富豪の多くはITデジタル分野を中心にしたグローバル企業のトップが占めるという。 

こうした巨大企業がもたらす富の偏在や不均衡は反グローバリズムやポピュリズムをもたらし、GAFAに対する課税や規制論議の高まりにつながっている。 

デジタル経済ではユーザーのクリックに応じ自らの嗜好に沿った広告が表示されるなど、ユーザー自身も価値創造に参加している。EUなどはこの点に着目し「ユーザー所在地(消費国)にも課税権を付与すべきだ」との主張。これに対し米国はGAFAだけを狙い撃ちすることに反対。「ビッグデータを活用し自動運転を模索する自動車産業や、あらゆるモノがネットにつながるIoTを進める製造業も課税の対象に含めるべきだ」(財務省)と反論している。 

デジタル課税問題は、今年6月に大阪で開催される20カ国首脳会議(G20)の主要議題の一つとして取り上げられるという。この問題のもう一つのキーワードである無形資産、タックスヘイブンの問題と併せ、議長国を務める日本の調整手腕に期待したい。