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賃貸経営の「家賃保証」に落とし穴 大幅収入減で売却ケースも

 福井県内の賃貸住宅のオーナーと不動産運営会社の間で家賃保証をめぐるトラブルが起きている。オーナーが保証されていると見込んでいた家賃収入が建築から数年後に減額されるケースで、建築ローンを支払いきれなくなり、管理の放棄や売却をせざるを得なくなったアパートもみられる。福井県は賃貸住宅の空室率が全国ワーストレベル。オーナーは土地の相続対策で賃貸経営に乗り出す高齢者が多く、同様のトラブルが空室増の一因になっている可能性がある。

 ■残ったのは借金

 「なぜか金が手元に残らんのや」。福井市西部にアパート2軒を所有する同市の70代男性は2年前、地元の不動産会社に相談に訪れた。大手賃貸マンション運営会社の勧めで、父親が土地の相続対策として1997年と2003年に建てたアパートだった。

 運営会社側とは30年間の一括賃貸借契約を交わしており、「『家賃保証』と言われ、契約期間中は一定の収入があると信じていた」。だが、契約書には、経済事情の変動などで家賃額を改定できるとの内容の記載があった。1室の家賃は新築時の7万円台から5万円台に下げられ、収入は大幅に減っていた。

 支出面では、10年ごと数百万円の改装費などが、運営会社側との契約を維持するために必要だった。「収支がマイナスでこのままではやっていけない」。結局、アパートはもともと持っていた土地と一括で売却。資産はなくなり、建築時の借入金は今も2千万円の残債がある。

 ■10年後に顕在化

 家賃保証をめぐるトラブルは全国的に起きており、福井弁護士会副会長で前消費者問題対策委員長の八木宏弁護士は「県内でも数年前から、常に複数の案件が発生している状態が続いている」と説明する。業者側が土地を持つ高齢者に賃貸住宅の建設を持ちかけることが多く、「(一定額の)家賃がずっと入ってくると思えるような説明がされているとしか思えない」と話す。

 訴訟に至った例もあるとするが、「業者側は『リスクの説明は十分にしてあり、理解いただいて契約している』としか言わない。契約書自体は家賃収入をずっと保証するという内容の記載はなく、権利救済側として証拠を集めるのは難しい」と語る。

 この問題を受け、国土交通省は16年、家賃変動の条件に関するオーナーへの書面交付と十分な説明を不動産業者に義務付け、各業界団体宛てに通知している。だが、八木弁護士は「家賃保証のトラブルは、建築から10年ほどたって顕在化する。通知以前に契約されたマンションで、今も問題は起きている」とする。

 ■土地受け継ぐ風土

 総務省統計局による5年ごとの住宅・土地統計調査を基にした関係機関の算出結果によると、08年の県内の賃貸住宅空室率は30・1%で、都道府県別で最も高かった(全国平均19・0%)。13年調査では28・8%と分析され、全国ワースト水準で依然推移しているとみられる。

 需要を上回る賃貸住宅が建てられてきた背景について、県内のある不動産業者は「先祖から受け継ぐ土地を大事にするのが福井の風土。相続段階でも売却はせず、賃貸経営で活用しようとする人は多い」と分析。「家賃保証」をうたい文句にした業者の勧誘がこれに拍車を掛け、空室増を招いてきた面があるとみる。

 15年には法改正で相続税の基礎控除(非課税枠)が引き下げられ、相続対策の対象者が増えた。だが、宮永不動産(本社福井市)の宮永真孝社長は「マンションを持っていればもうかるというのは、バブル期の考え方」と指摘。建物が法定耐用年数に達すると、減価償却によって抑えられていた課税対象額が一気に上がり、建築ローンや補修費を家賃収入で確保できなくなる例は多いという。「健全経営のめどがなければ、安易に建ててはいけないという意識を」と訴えている。

 【家賃保証】 賃貸住宅のオーナーから運営会社が建物を賃借し、入居者に転貸する一括借り上げ(サブリース)契約で、オーナーに毎月一定額の家賃収入を保証する仕組み。オーナーは、空室が生じて家賃が入らなくなるリスクが軽減される。ただ一般的には、築年数の経過などに伴う家賃見直しが条件に盛り込まれており、当初の家賃収入が契約満期まで保証されるわけではない。