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「出国税」の使い道はどうすべき?:若者の海外旅行促進に向けた提案募集中

日本を出国する旅行者らを対象に、「出国税」として1人当たり1000円を徴収する方向で検討が進められている。安倍政権は観光振興を成長戦略の柱に位置づけており、東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年に訪日客を4000万人に増やす目標を掲げている。

だが、旅行業界からはその目標達成だけでなく、日本人の海外旅行に水を差すとの懸念の声も上がっている。出国税は必要なのか。その使途はどうすべきか。日本旅行業協会(JATA)理事・事務局長の越智良典氏に話を聞いた。

「出国税」がもっとも合理的

Business Insider Japan(以下、BI):現在検討されている出国税について、どのような懸念を抱いているか。「出国税」が出てきた経緯も含めて教えてください。

越智良典氏(以下、越智):日本が観光先進国を目指していく中で、財源をある程度確保していろんな施策をしていくべきだ、というのは2017年4月時点で決まっており、今の国の財政規律の中では、新たな財源をつくり出していく必要がある、というのも総論としてまとまっていた。

今インバウンド(訪日外国人客)の需要がどんどん増えてきており、首相官邸のリーダーシップでビザ取得の簡易化や免税の拡充などを行い、成果も出してきた。インバウンドをさらに伸ばすためにも早く財源を確保し、施策を実施していくべきだ、という意見に反対する人もいない。

あとはどうやるかという話。

一つの懸念は、一般財源化(いかなる目的にも使える財源)してしまうのではないかという点。そうなってしまっては、他の用途に使われてしまい、頑張って集めても意味がない。きちんとひも付けし、観光庁が使えるようになるのか。法律で明確にしてほしいと思っている。

BI:具体的には財源をどう集めるのですか。

越智:政府の有識者会議で提案したのは4つの案だ。宿泊税と航空税、出国税(もしくは入国税)、ESTA(電子渡航認証システム)。

1.宿泊税-ホテルや旅館に宿泊する際に課税される法定外目的税で、東京都・大阪府が実施、京都市も検討している。

2.航空税-ヨーロッパ諸国が導入し、クラスや移動距離などによって課税額が異なる。

3.出国税(入国税)-韓国やオーストラリアなどが導入。出国/入国する際に課税。日本で2015年7月に導入された「出国税」は国外に移住する富裕層の資産に対する課税制度(国外転出時課税制度)でこれとは異なる。

4.ESTA(電子渡航認証システム)-アメリカが導入。外国人が短期の観光や商用のためにビザなしでアメリカに渡航する際に必要で、14ドルを徴収している。4ドルはセキュリティ対策に、10ドルは観光振興に使われている。

われわれとしては、税を取られた人たちが最終的に利益を受けることを考えると、インバウンドから徴収するESTAが一番良いのではないかと考えた。アメリカは治安の関係から2009年に導入したが、日本もオリンピック・パラリンピックがある。

宿泊税は、主要都市は宿泊施設の稼働率が高いが、地方は稼働率が平均で3割ぐらいしかなく、負担が大きい。

航空税は、クラスや移動距離などによって課税額が異なり、富裕層に対するぜいたく税といった性格がある。ただ日本では、国内線まで含めると需要に影響が大きくなじみにくいのではないかと、旅行会社も反対した。

ESTAはビザが必要ない国の人たちから徴収するが、そういう国からだけ課税するのは説明が難しい。

そうなると、出国税しか選択肢が残らない。「訪日客の外国人だけ対象にすべきでは?」いう意見も出たが、その中にはビザを相互免除している国もある。それなのに、日本人だけ除くとなると国際的に説明がつかないというのが観光庁の主張だ。

日本人旅行者への受益をどうするか

ただ、昨年の対象者で見ると、約4000万人のうち1700万人は日本人。1人1000円を徴収すれば、計約400億円の税収が見込まれる。これは、観光庁の17年度予算(約210億円)の倍近い規模となる。

海外のように、出国税をインバウンドの整備に使うと税金を徴収される日本人は何もメリットを感じない。徴収を代行するのは旅行会社になるが、それではお客に対して説明がつかないので何らかの施策が必要だ。

また、会社によってはシステム改修の費用が3000万~5000万円にも上るとされており、この負担をどうするのか。われわれはこの2つへの対策を要望している。

「旅行会社はインバウンドが増えてもうかっている」という意見もあるかもしれないが、そんなにもうかっていない。ツアーの取扱い旅行会社に対する法的規制が一切ないため、誰でも旅行会社を立ち上げることができる。実際、8割を占めるアジアからのインバウンドのほとんどを華僑系/在日民族系旅行会社が取り扱っている。その中には、日本のお土産物店に連れて回るような満足度の低い安いツアーも増えている。

今はどんな会社がどういうツアーを行っているのか実態もあまり把握できていない。2018年1月からはようやくオペレーター制度ができ、日本で業務を行う旅行会社は各地方自治体に登録し、違法なことをやっていたら業務指導ができるようになる。インバウンドに関しても、人数を増やすだけではなく、ビジネスの健全化を図り、中身をよくしていく必要がある。

若者の海外旅行者をどう増やしていくか

BI:業界としては、収益源であるアウトバウンド促進に向けて具体的に何を提言する?

越智:今海外旅行で問題になっているのは、治安対策。海外の安全情報の共有や今は手作業で行っている安否確認をもっと違う形でできないか考えている。あと出入国時の手続き簡素化、ビザの相互免除の促進もある。

特に重点的に考えているのが若者の海外旅行者をどう増やすか。若者を国際化していかないと、海外から観光客を受け入れるにしても、国内で対応できるグローバル人材が足りなくなる。若者のために使うのは総じて賛成を得ているが、具体的にどう使うかを今検討しているところだ。

BI:1000円とはいえ、安く海外に行きたい若者ほど影響が大きい。

越智:若者がよく使っているLCC(格安航空会社)の1000円とヨーロッパなどに50万円で行っている層の1000円では影響が全く異なる。

今若者の海外旅行者を増やす施策をいくつか考えている。例えば、パスポート取得(12歳以上)に1万1000円~1万6000円かかるが、18歳時点の取得費用を無償化もしくは一部補助にする。他には、修学旅行における海外での交流プログラムへの資金援助、観光系の大学に通う日本人学生約4000人の企業インターンを促進して人材育成する、などを考えている。

400億円のうちいくら使えるのかはわからないが、ハードのインフラに使ってしまえば、すぐになくなる。人材やすでにあるものを改善するようなソフトインフラに使うべきだろう。他の省庁を含む観光関連の予算全体で見れば、約3000億円あるが、バリアフリーなど観光に直接関係ないような予算も含まれており、訪日客や海外旅行者を増やすために観光庁が主導して使っていくべきだ。

観光庁は今後、「若者のアウトバウンド活性化」を検討する委員会を発足し、詳細を詰めていこうとしている。

「若者は海外旅行に行こう!」といったポスターではなく、もっと具体的に最初の一歩を踏み出すような施策が何かを考えている。これを2018年2月までにまとめて提案したい。