国が国宝や重要文化財に指定する美術工芸品をめぐり、自民党が6日の税制調査会で、「文化防衛」の観点から相続税の事実上の免除を含めた優遇措置の拡充などを議論することが4日、分かった。高額な相続税の納付を懸念する所有者が売却し、所在不明となったり持ち主が細分化するケースが多いからだ。
重要文化財の建造物については、相続税の算定基準となる評価額を7割減額できることが国の通達で定められている。自民党の文化立国調査会(山谷えり子会長)は、優遇対象を美術工芸品にも拡充したうえで、相続税の全額猶予も可能とする制度の創設を求める考えだ。
文化庁によると、国宝や重要文化財に登録された美術工芸品は、4月1日現在で1万654点。一方、3月末時点で国宝の「短刀(銘国光)」など164点の所在が不明となっていた。所在不明の理由のうち盗難は30件、売却は9件あった。
国指定の重要文化財の美術工芸品は建造物とは違い、相続税の優遇措置がない。国に買い取りを求めるケースもあるが、平成29年度の国宝や重要文化財の買い上げ予算は前年度から約4億円減の約9億円に縮小した。
20年には運慶作の大日如来坐像(後に重要文化財に指定)が米国でオークションに出品された。坐像の所有者は当初、国による買い上げを希望したが、文化庁が予算の都合で購入を断念していた。結果的に日本の宗教法人が落札し、海外流出を免れた。
文化立国調査会は合わせて、文化財の保護や修復、盗難対策費などを来年度予算案で十分な額を確保するよう求める。
党税調は、来年度以降の税制改正の課題として議論する。文化財をめぐっては、国の来年度予算編成で防犯対策の強化なども焦点となっている。
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