東京都新宿区・山梨県甲府市のあいせ税理士法人
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世界各国からタックスヘイブンに「法人税57兆円」が流れている?日本は5兆円で3位

世界102カ国・地域からタックスヘイブンに流出した法人税額を調べたところ、日本は468億ドル(約5.2兆円)と米国、中国に次いで3番目に損失額が高いことが分かった。世界の損失総額は年間5000億ドル(約56.5兆円)と推測されている。

これは「企業の租税回避による歳入損失総額(2016年)」をまとめたもの。

流出した法人税がGDP(国内総生産)を占める割合で見てみると、チャド、ギアナ、マルタなど低~低中所得国がランキングの上位を独占する。つまり法人の租税回避が経済そのものにもたらしている打撃は、新興国の方が大きいということになる。

2016年に国際通貨基金(IMF)の調査員、アーネスト・クリヴェリー氏などが共同で発表した報告書が、この調査のベースとなっている。国際連合大学(UNU)が租税回避の実態に関する正確性を高める意図で、国際政策調査ネットワーク、ICTD (International Centre for Taxation and Development)のデータベースを利用し、様々なデータベースと照らし合わせて再分析した。

■法人税の国外流出総額が高い30カ国・地域

30位 ザンビア 9.8億ドル
29位 オランダ 10.3億ドル
28位 英国 10.5億ドル
27位 スリランカ 10.7億ドル
26位 エチオピア 11.0億ドル
25位 ポルトガル 11.1億ドル
24位 韓国 11.2億ドル
23位 チュニジア 11.3億ドル
22位 コスタリカ 11.7億ドル
21位 グアテマラ 14.6億ドル

20位 マレーシア 23.3億ドル
19位 カナダ 33.8億ドル
18位 ベルギー 34.9億ドル
17位 ペルー 49.2億ドル
16位 イタリア 53.3億ドル
15位 スペイン 55.1億ドル
14位 南アフリカ 58.2億ドル
13位 オーストラリア 60.5億ドル
12位 フィリピン 63.7億ドル
11位 インドネシア 64.8億ドル

10位 パキスタン 104億ドル
9位 ドミニカ共和国 117億ドル
8位 ドイツ 150億ドル
7位 フランス 197億ドル
6位 アルゼンチン 214億ドル
5位 マレーシア 233億ドル
4位 インド 411億ドル
3位 日本 467億ドル
2位 中国 668億ドル
1位 米国 1888億ドル

■GDP拡大の裏で法人所得税収入は減少――米国

損失額をベースにしたランキングでは、特に南アジアや南米で大きな損失が目につく。

まずは1888億ドルという米国の桁はずれの損失に驚かされる。近年、AppleやGoogle、Facebookなどに代表される多国籍企業の租税回避に焦点が当てられているが、タックス・ヘイブンや慈善事業を利用した「合法な租税回避行為」が、国家の税収を大幅に減らしていることはいうまでもない。

米国ではGDPが年々上昇傾向にあるにもかかわらず、法人所得税収入は減っている。GDPを占める割合は6%弱だった1950年を境に急下降。前金融危機直後には1%まで落ち込み、現在もほぼ同水準で停滞している(租税政策センター調査 )。

こうした数字を目の当たりにすると、多国籍企業による節税は合法的ではあるものの、道徳的、倫理的に正当な行為とはいいがたい。また欧州ではAppleやGoogle、Facebookに追徴課税が命じられるなど、各国政府の徴収方針との摩擦も表面化し始めている。

OECD加盟国で最も損失が低いのはスウェーデン(2000万ドル)で、GDPの0.01%にも満たない。

■日本の法人税システムは国際化に対応しきれていない?

日本の法人税は「内国法人(国内に本店又は主たる事務所を有する法人」と「外国法人(内国法人以外の法人)」にカテゴライズされているが(Y’s国際会計グループより )、多国籍企業への課税に特化した徴収方法が定められていない。

近年、国際化に対応可能な法人税改革の必要性が議論されているが、現時点では具体的な改革は遂行されていないようだ。

■GDPに対する法人税流出の割合が最も高い国

しかし法人税流出額がGDPを占める割合を比較してみると、まったく異なる背景が見えてくる。

18位 インド(推定損失額411億ドル)など合計25カ国・地域  2.34%(GDPを占める割合)
15位 グレナダ(1970万ドル) 2.43%
15位 ドミニカ(1200万ドル) 2.43%
15位 コスタリカ(11.7億ドル) 2.43%
14位 グアテマラ(14.6億ドル)2.72%
13位 モザンビーク(4.5億ドル) 3.11%
12位 セントビンセント・グレナディーン(2560万ドル) 3.45%
11位 セントクリストファー・ネイビス(2810万ドル) 3.66%

10位 セントルシア(5250万ドル) 3.81%
9位 ナミビア(4.8億ドル)3.96%
8位 エリトリア(1.3億ドル)3.96%
3位 ザンビア(9.8億ドル)4.42%
3位 パキスタン(104億ドル) 4.42%
3位 ギニア(2.8億ドル)4.42%
3位 コモロ(2910万ドル)4.42%
3位 アルゼンチン(214億ドル) 4.42%
2位 マルタ(4.2億ドル) 4.59%
1位 ギアナ(2.1億ドル) 6.97%
1位 チャド(損失額 9.4億ドル) 6.97%

■租税回避は新興経済の成長を妨げる一因?

ここでは比較的経済規模の小さな国・地域がランキングの上位を占めている。1位は中部アフリカの共和国、チャドと南米フランス領ギアナ、2位は南欧州の共和制国マルタ、3位は南米アルゼンチンとなった。カリブ地域、アフリカ地域からも多数ランクインした。

総体的な流出平均が最も高いのはサブサハラアフリカ (サハラ砂漠より南部に位置するアフリカ大陸)で、南米およびカリブ、南アジア、北米、中近東および北アフリカ、東および太平洋地域が続く。

こうした傾向は国の所得水準に比例する。平均所得が低い国では流出率が高く、高い国では低くなる。

流出額トップの米国、日本、中国ではその額がGDPの1%にも満たないのに対し、チャドやギアナではGDPの約7%が、マルタでは5%が失われていることになる。特に新興経済にとっては、成長の妨げの一因となる手痛い打撃である。

UNUは報告書の末尾で、多国籍企業の租税回避を公平なものへと移行させるためには、「法定税率の枠組みを超えた方法論的アプローチが必要」と結論づけている。

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