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自分の赤字会社へ財産を「遺贈」 そんな節税アリ?

「先生、遺言って相続人宛てにしか書けないんですか?」「いいえ、お世話になった人とか親族以外の人宛てにも書けますよ」「じゃあ、法人へは?」「法人へも書けます。最近はNPO法人や社会福祉法人などへ財産を遺贈するのもはやってますよね」「確か法人には相続税はかからないんでしたよね。ってことは、父の財産を私の法人に遺贈してもらえば相続税はナシで済むってことですか?」「基本的にはそうなんですが、場合によっては逆に法人税、譲渡所得税、相続税のトリプル課税もあり得ますよ」「ト、トリプル課税?」

■自分の経営する会社への遺言もOK

 意外に知られていませんが、遺言は自然人(普通の人間のこと)宛てでなく、法人に対してでも書くことはできます。遺言により財産を渡すことを遺贈といいますが、最近は遠い親戚より、公益法人や認定NPO法人などへの遺贈(寄付)をしたいという話もよく聞きます。
 例えば私が最近相談を受けた事例は、障害を持つ子供に財産を残したいけれど、子供に直接財産を遺贈しても面倒をみてくれる人がいないため、成年後見人を選任したうえで施設に財産を遺贈したい――という内容でした。しかも、ただ単に施設に財産を遺贈しただけでは施設が自由にその財産を処分できてしまうので、「私の子供の介護および財産管理をお願いします」という内容を織り込んだ遺言を作成したい、とのことでした。
 このように財産を渡す代わりにお願いごとをする遺言を「負担付き遺贈」といいます。負担付き遺贈(贈与)という言葉からは、例えば不動産とそれにかかるローンを同時に引き継がせる例がイメージされますが、前述のように「負担」は借金とは限らないのです。
 話を戻しますと、法人にも遺言が書けるというからには公益性の高い法人だけでなく、同族会社である株式会社への遺贈でもOKなのです。
 冒頭の会話のケースは「父の財産を自分の法人に遺贈させたら法人税の対象になるだろうが、相続税よりはマシ」という節税目的です。受け取る法人側には法人税がかかりますが、青色申告をしている法人なら欠損金(赤字)を9年間繰り越せますので、この金額の範囲内の遺贈であれば法人税はかからないことになります。もちろん法人に対しては相続税はかかりません。

■専門家も恐れる「みなし譲渡課税」

 冒頭のように自分の赤字会社へ財産を遺贈してもらったら、相続税はかからず(赤字の額によっては法人税もなく)、一見非常に良さそうに思えます。しかし、ここに大きな落とし穴が存在するのです。
 所得税には「法人に対し、時価の2分の1未満の価額で財産を譲渡した場合には時価で譲渡したものとみなす」という規定が存在します。これを「みなし譲渡課税」といい、専門家の間では恐れられています。規定は理解していても「時価」が明確でないため、2分の1相当額がいくらになるのか相談者にハッキリ助言できず、厄介なわけです。
 この制度はまさに、意図的に法人へ安い金額で財産を売却して譲渡益を少なくすることを防ぐ目的で設けられています。個人間で低い金額で譲渡したら贈与税の問題が生じますが、個人が法人へ財産を安く譲渡したら譲渡所得税がかかるのです。
 仮に会社社長で被相続人(亡くなった人)のAさんが遺贈により自分の会社に不動産を渡した場合は、この「みなし譲渡」に該当するため、Aさんには譲渡所得税の納税義務が生じます。しかしAさんは死亡していますので、相続人(財産を受け継ぐ人)がその納税義務を承継することになります。現行の税制では、相続人は不動産を取得していないのにもかかわらず、被相続人の譲渡所得税を払うことになるわけです。

■さらに相続税がかかることも…

 相続税法第9条には「相続税の対象となる財産以外でも、他人の行為により利益を受けた場合には相続税や贈与税が課税される」という規定が存在します。これは直接的な財産移転でなくても相続や贈与により利益を受けたら課税されるというもので、要注意です。冒頭のケースでこの規定が適用されてしまうと、法人税、みなし譲渡課税、そして相続税のトリプル課税となってしまうのです。
 例えば会社が不動産を遺贈で受け入れると会社の純資産は増加するため、株価が上昇し、株主たちは利益を享受することになります。この結果、株主たちは直接財産を受け取るわけではなくとも、被相続人の遺贈という行為によって間接的に利益を享受したことになり、相続税の対象(生前に行えば贈与税)の対象となるのです。
 もちろん法人の赤字が遺贈される財産を上回っていれば、法人税も譲渡所得税も相続税もかからない場合もあり得ますが、総合的に「租税回避行為だ」とみなされないよう厳重に注意する必要があります。効果の強い節税対策には「副作用」もつきものだということです。